第三に、部下が知識や情報をもち自立的に行動するようになると、マネジャーの役割も違ってくる。まず、マネジャーの過去の職務体験に基づく経験知というのが役立つ場面が少なくなっている。そのために、管理者から学ぶことも減ってきている。そして、部下の方が知識や情報をより多くもつという逆転現象が起き、部門の仕事の主体は第一線で活動する社員となる。そういう状況では、指示命令型の管理スタイルはもはや通用しない。部下の活動をファシリテートすることが主になる。つまり、一人ひとりの部下を動機づけたり、育成して潜在能力を開花させることが主たる仕事となる。その際も、指示するというのではなく、部下本人に気づきを与え、自ら行動を起こすのを支援する立場となる。
また、リーダーには、もともと大きな絵を描き、その実現に向けてメンバーを鼓舞していくという働きがある。マネジャーにもこの働きが求められる。未来事業推進力と呼べるものである。3~5年の挑戦的な事業像を描き、周囲の人を巻きこみそれを実現する力である。価値創造の時代となると、過去の人たちが築いた事業の延長線上で事業を進めることはできない。マネジャー自ら部門のあるべき姿を描き、その実現に向けて部門を伸長させることである。部門の未来の事業像が明確に示されることで、部下の自立的な行動にも方向性が定まり、自立的ではあるがその動きは事業像の実現に向けシンクロしてくることになる。 |