キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】

2008年4月10日配信
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キャリア支援者は専門家?
【3】
筑波大学 特任教授 キャリア支援室長 渡辺 三枝子
 は、専門家の条件とは何なのだろうか?この問いはカウンセラー教育に関わる者として私自身が自分に問いかけ続けてきたものである。この問いは専門家の倫理綱領と密接につながるものでもあるはずである。同じようなことを考えていた人に明治学院大学の金澤吉展先生がいる。氏の著書「臨床心理学の倫理をまなぶ」を参考にしながら、専門家について考えてみたい。
 沢氏は「専門家」の語源を紐解くと、その意味に日本と欧米では違いがあることが指摘されている。「専門」の英語であるprofessionは「公の宣言」「公言した職業」を意味するラテン語に由来し、他方日本語の場合、専門は「もっぱら」すなわち「他のことをさしおいて、それに集中するさま」に由来する。つまり、professionと日本語の「専門」は「社会性という観点から正反対ともいえること」、つまり、前者には「自分の持つ知識や技術を他者のために実践する、という他者奉仕の精神が見られるし、公に誓いを立てるほどの責任と自戒、そして周囲から許認される必要」という厳しさが内包される、と金澤氏は指摘している。他方日本語のように「ひとつの分野や事柄についての知識・技能に優れている」だけではないのである。
 ちらの意味を取るかで、実は専門家としての資格要件、教育内容、守るべき倫理の内容などが全て異なる。キャリア支援関連の資格認定を行う組織でも、有資格者のための倫理規定を設けるようになってきた。しかし、その背景にこのような相違があることに気付いているだろうか。
 た河上氏は、ある職業が専門職と呼ばれるための要件として、理論的知識に基づいた技術の習得に長時間の高度な訓練を持ち、免許資格制度を採用し、さらに公共の利益促進を目標とすることなどを挙げている。キャリア支援者が真の専門家となるためには、資格取得だけでは十分ではない。「相手を利己的目的に利用しない;個の尊厳を守る:社会的責任を果たす」などの職業倫理の確立と遵守が求められ、さらに「周囲から認知」される必要があるのではないだろうか。

【引用文献】
 臨床心理学の倫理をまなぶ 金澤 吉展 (2006/東京大学出版)
 専門家の責任と契約理論 ―契約法からの一管見― 
河上 正二 (1995/法律時報,67,6-11)

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