キャリアという文言を使わなくても、実質的に個人の職業人生を支援することを役割として、社会から認知されていた人は、かつては公共職業安定所の職員と中学校・高校の担任や進路指導担当教師、大学等の就職課の職員であったのではないだろうか。その関係者は自分たちをキャリア(あるいは就職・職業)支援の専門家とは認知しておらず、労働事務官、教師、大学職員という職業の一機能として行っているという意識でいたと思う。その時代はキャリア支援は専門職ではなかったといえよう。しかし、ご存知のように、20世紀末には社会構造・産業構造の変化をうけ、中高年齢者の再就職支援、失業中若者の進路相談や女性の再就職の必要性などの新たな課題と人材派遣業界などの台頭などにより、キャリア支援を職業とする人々が誕生し、名称もキャリアカウンセラーとかキャリア・アドバイザーなど多様化した。極め付きはキャリア・コンサルタントという職名の出現であろう。さらに資格社会への傾斜の波にのり、キャリア支援は資格職業化している。以前と異なり、今では資格取得してキャリア支援の専門家として働けるようになった。
資格は免許と異なり独占力はないので、資格保持者だけがキャリア支援を実践できるという制約はないわけであるが、他方、資格職業になるということは資格保持者が専門家として社会と職業団体から認知されたことでもある。真偽のほどは定かではないが、職業相談で多くの求職者から感謝されてきたハローワークの職員が、キャリア支援関連の資格を保持していないために専門家として見なされず、働きにくくなったという。
では、専門家の条件とは何なのだろうか?この問いはカウンセラー教育に関わる者として私自身が自分に問いかけ続けてきたものである。この問いは専門家の倫理綱領と密接につながるものでもあるはずである。同じようなことを考えていた人に明治学院大学の金澤吉展先生がいる。氏の著書「臨床心理学の倫理をまなぶ」を参考にしながら、専門家について考えてみたい。 |