1.情報システムと人事管理の結合形態としての組織モード
日本企業に自律的キャリア開発が要請されるようになったのは、労働市場の変化より、むしろ組織モードの変化の影響を受けていると考えられます。それでは組織モードとは何を指すのでしょうか。そして、その変化の内実はいかなるものなのでしょうか。さらに組織モードの変化が何ゆえに従業員の自律的キャリア開発を要求するのでしょうか。
組織は、原材料、労働力、資金、情報などを組織内に投入(インプット)し、それを製品、サービス、情報として産出(アウトプット)します。環境からのインプットのアウトプットへの転換は、生産活動であるとともに情報処理活動ともいえます。そこでひとまず、「組織とは外部環境のさまざまな資源のやりとりに依存している情報処理装置である」と考えましょう。そうであれば、組織が、環境に適合した合目的な行動をとるためには、的確な「情報システム」(情報処理、コミュニケーション、決定のシステム)が必要となります。その際、情報システムは、時間ないし資源の活用といった面で効率的であることが望ましい。したがって、業務や生産に携わる従業員の間に流れる情報の量や質、それを用いる決定の権限や義務の組織的配置を適切に決めなければなりません。
他方で、従業員が情報を処理するには、それを行おうとする個人の積極的な意思が必要です。したがって、組織は従業員の努力を特定の方向に導き引き出すインセンティブ制度(評価と報酬の仕組み)をつくらなければなりません。インセンティブ制度と情報システムは様々に設計できますが、特定の情報システム特性に要求される技能の効率的な利用が、それに対応するインセンティブ制度によって適当に動機づけられることが不可欠です。同時に、従業員に適切なトレーニング(キャリア開発)を施し必要な技能を発展させていかなければなりません。
このように考えると、人事管理の内実は、特定の情報システムをうまく機能させるように、従業員の意欲と技能を高める「インセンティブ制度」と「トレーニングの仕組み」と捉えることができるでしょう。そして情報システムと人事管理がうまく結合すれば経営パフォーマンスに良好に作動するようになります。言い換えれば、特定の「情報システム」と特定の「人事管理」の適切な結合はシナジーを生み出します。
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