キャリア形成推進マガジン
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2010年8月10日配信
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教育現場のキャリア・カウンセラーは・・・
=== 専門的なアプローチ ===
【1】
 ソニー学園 湘北短期大学 キャリアサポート部 部長 近藤 章雄 《プロフィール》

◆専門性を基礎とした学生に対するキャリア・カウンセリング

 心の時代、学生との援助関係は、「人間対人間」の平等な関係を尊重することが基本的姿勢である。したがって、学生相談はカウンセラーの一方的な「人助け」ではない。

 教育現場のカウンセリングも、他のカウンセリングと同様に、理論と実践を統合してクライエントに向き合っていく。特に、積極技法などを駆使して、学生(クライエント)が抱える問題などを一緒になって検証していく。学生の状況に応じて、情報提供、学習指導、進路・職業選択と対人関係スキル・社会的スキルの訓練をおこなうことで、学生の抱えている問題を主体的に解決できるように支援するものである。

 経験の浅いカウンセラーは、学生の直接的な言葉(訴え)に何とか応えようと努力するあまり、問題の裏面や背景に注意が向かず、短絡的に「正しい」答えを見つけ出そうとすることがある。そのカウンセラーの熱意と努力は認めるが、学生の言葉を直接的に受け止めるだけで問題を理解したと思うのはカウンセラーの誤認であり、そこから導き出された回答は、観察力と洞察力を欠いたカウンセラーの思い込み(決めつけ)であることに、気づくことが必要である。

問題の捉え方とアプローチ方法 学生相談におけるキャリア・カウンセリングは、クライエントである学生を観る(観察・分析)ことから始まる。一般的には、クライエントの外見と内面を、カウンセラーは五感を使って丁寧に見聴きする。観察と会話をつうじて、(1)情動(感情)(2)認知(考え方)(3)行為(行動)(4)生理機能(身体的反応)の4つの視点(切り口)から洞察し問題を捉えることで解決策を探る。どこかが変われば変化(行動変容)が起きる。

 では、学生たちへの学生相談は、どのようにして行われるのか。肝心なことは、カウンセラーは学生の「何を知っているか」ということではなく、知っていることを使って「何が出来るか」ということである。

 学生相談においても、カウンセラーと学生相互の信頼関係の構築(ラポール形成)はとても重要なものである。この信頼関係を構築するのに、たいへん役に立つのが「かかわり技法」と呼ばれるものである。それはクライエントの話を聴くために効果的なものであり、カウンセラーの視線や姿勢、声の調子、あいづちの入れ方、端的で短い言葉の使用、クライエントの言葉を繰り返す、話題を変えないなど様々な要点がある。

 信頼関係ができれば、情報提供、指示、助言、忠告、教示、解釈、フィードバックがより効果的になり、目標の設定(問題をどのように解決したいか)を導き出すことができる。そして、カウンセラーとの共同作業を通して、学生は、自分の選択肢を検討し、自分の矛盾に直面し、問題への洞察を深めることができる。こうしたプロセスを通して、学生は自分の考え方に気づき、自ら判断することで、自己決定に至るものである。だからと言って、カウンセラーは話しばかりをしていてはいけない。カウンセラーは「聴きなさい」また、「訊ねなさい」。そして、相手を励ましなさい。カウンセラーが「聴く」と「訊く」ことでクライエントは考え、問題を明確化していく。

 このような傾聴と質問によって、クライエントの肯定的資質と強みを探し続けるカウンセラーの姿勢は、トレーニング(学習と練習)によって研ぎ澄まされていく。そこには、「かかわり技法」と呼ばれる複数の技法があり、発話を促す質問技法(クライエントの内在する矛盾や非合理を見つける)、はげまし技法(クライエントの話のキーワードを繰り返す)、いいかえ技法(クライエントの話の内容の確認と明確化)、感情の反映技法(動作や話しぶりからクライエントの感情を感じ取り伝える)、要約技法(クライエントの話を簡潔に要約する)などである。

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