キャリア形成推進マガジン
フロントライン == キャリア開発の最前線 ==

2010年7月10日配信
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教育現場のキャリア・カウンセラーは・・・
=== 無防備な就職活動とキャリア教育の勘違い ===
【1】
 ソニー学園 湘北短期大学 キャリアサポート部 部長 近藤 章雄 《プロフィール》

◆あまりに無防備な就職活動「意欲の無いところに行動は生まれない」

  平成21年度、内定が取れないまま卒業した学生が3万1千人いる。就職率は3.9ポイント前年比を下回り、下げ幅としては過去最大となった。(5月21日厚生労働省発表)景気は底打った感があり、緩やかな回復基調が見られるものの雇用環境は最悪の状態が続いている。
 働こうと思っても働けない若者がいる一方で、働くことに意欲的になれない若者がいる。
 近年、大学進学率が50%を超え、20年前の約2倍まで上昇した。選ばなければどこかの大学には入れる。大学全入時代。ゆとり教育の推進、AO入試の増加の影響を受けて、全体的に学生の質が低下したと指摘する声が多いことは事実だ。進学競争をしてこなかったことから、大きな苦労もたいした挫折経験もなく、何となく生きてこられた学生たちにとって、突然現れたこの就職難の時代、「就職できるか」は大問題である。先行き不安定な社会で、夢や希望を描くこともできないため、今日を短絡的に過ごしてきた。「こんな時代だからこそ」挑戦しよう、頑張ろう。とは思わず「こんな時代だからこそ」諦めてしまう。安定企業(潰れない会社)、安定志向(ブランド志向)を望む。目の前に立ちはだかる就職活動は、真剣に考える卒業後の進路選択というよりは、あたかも友達とバーゲンセールに行くがごとく群れて行動する、行き先の見えない「自分探しの旅」。その姿は、あまりにも無知で無防備である。採用試験は(1)「学力」、(2)「社会性」(マナー・常識)、(3)「コミュニケーション力」(理解力、表現力)、(4)「行動力」など様々な角度から学生の「仕事力」(働く能力)を問われ試される(筆記試験、面接、グループワーク)。社会人となって働くことの意味(収入を得るだけ?)も分からないままでは、社会で真に「働くこと」ができるのか。そもそも、「意欲」と「能力」の無いところに職はない。競争の無い世界に自己成長(自己変革)は望めない。

 図1
2011年度マイコミ新卒採用予定調査
 図2
読売新聞 くらし教育
 キャリアの根源的なところは、意欲を持って生きることであり、意欲の無いところに人生の価値など生まれないのである。2010年、学生の安定化志向とは裏腹に、企業の新卒採用は「量より質」がさらに「徹底した質」に強化され厳選採用となっている。(図1:株式会社毎日コミュニケーションズ 「2011年マイコミ新卒採用予定調査」)
 採用選考にあたって企業が重要視しているのは(1)コミュニケーション能力 (2)主体性 (3)協調性である。(図2:平成22年5月4日読売新聞 くらし教育)
 混沌とした競争化社会では「安定」ではなく、意思疎通を図るための情報収集力や自己の考えを論理的、合理的に主張できる表現力。指示待ちではなく主体的に行動できる意思決定力、判断力。周囲とうまくやっていく組織力。リスクを覚悟した「チャレンジ精神」がなければ生き残っていけない。企業が採用したい学生は、ひ弱な学生ではなくガッツのある学生である。「安定」を求めている学生と、「やる気」のある学生を探している企業との間には、大きな溝があるようだ。
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