キャリア形成推進マガジン
フロントライン == キャリア開発の最前線 ==
 

2010年7月10日配信
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教育現場のキャリア・カウンセラーは・・・
=== 無防備な就職活動とキャリア教育の勘違い ===
【2】
 ソニー学園 湘北短期大学 キャリアサポート部 部長 近藤 章雄
◆キャリア教育の勘違い(2つの盲点)

1.「面倒見のいい学生サービス」とは
 大学における「お客様」は、学生である。教育はサービス産業であるから、学生(お客様)サービスが大学における使命となっている(新基準)。したがって、学生にサービスを提供するとは、困難に直面している・悩んでいる学生に「何かしてあげる」ことだと考えている。しかし、「何かしてあげること」と「何でもしてあげること」とは似て非なるものである。学生サービス、特に就職指導は学生に何でもかんでもしてあげることではない。実は、「してあげること」で、その子の自立を削いでいることに気づいていなければならない。服を着ようとしてもがいている子ども、靴が履けないと泣き叫ぶ子ども。そこでつい手を貸すことで、その子の自立を削いでしまっていることがある。時間をかければ、子どもは目的を達成することができるのに・・・してあげることで「依存する子」を育てていることもある。

キャリアサポート部 相談風景
 同様にキャリア教育は、学生に何でも手を貸してあげることではない。
 適度な不自由さ(課題)を与えることで、自立を育てるのが教育である。つまり、ビフォーサービスではなく、徹底したアフターサービスに本来の教育的指導・学習がある。したがって、学生が何か行動を起こさなければサービス提供を行うべきではないのである。(エントリーシートが書けないで白紙で持ってくる学生に応えて書いてあげることではない)
 課題を与え、宿題を出すことで考えさせ自己の主張を明確化していく作業(プロセス)を励ます。小さな成功体験の積み重ねが自己成長を促すのである。学習は繰り返すことで知らなかったことが、「わかった」。「わかった」から「できた」に変わっていくことが教育なのである。

2.「企業を選ぶ力」をつけさせるキャリア教育
 就職難の時代(超氷河期時代)、採用枠は極端に狭まり会社説明会のエントリーもあっという間に埋まってしまう。そこで大学の就職担当者は、どうしたら企業から採用してもらえるのか、勢い企業から選ばれるための指導を強化せざるを得ない。「選ばれる力」を過度に意識した就職指導はノウハウ・テクニックに終始する傾向にある。学生たちも就職の厳しさを敏感に感じ取り、エントリーシート・面接対策においても、相手に合わせることで「よく思われたい」との思考が強く、「積極的である」「粘り強い性格」「他人を思いやる」など美しい「ぼかしことば」で飾られた文言が並ぶ。一見具体的にエピソードを交え自分の強みを強調しているようではあるが、内容はアルバイト経験が中心で誰しも経験してきたような話が延々と時系列的に続く日記のようである。その経験がどのように役立ったのか。その経験から、どのような学びがあり、自己成長につながったのか、結論が見えない。
 実はこの就職活動は、本来のキャリア教育とは逆行している。相手に合わせる発想から脱却することで、自分と向かい合うことがキャリア教育の基本である。「企業から選ばれる力」から「企業を選ぶ力」に立ち位置を変えることで、「自分の生き方」を考える。思考プロセスを身につけさせることがキャリア教育である。なぜなら、キャリア教育は主体的に本人が「人生を選ぶ」ことであり、人生を誰かに選んでもらうことはないからである。就職においても、企業から「選ばれる力」だけを意識していると、自分を見失うことになりかねない。選ばれるためのテクニックだけを身につけて、相手に合わせるだけの人生ではあまりに寂しすぎる。「人生はオセロゲーム」周りの環境(人間関係)によって生き方に大きな影響を受ける。社会に出る前の大学教育は、学生が主体的に動く自立した環境と教育の質が問われている。

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