| オーガニゼーショナル・ヒューマン・サービス (図1)
組織が発展していくことと、一人ひとりのライフ・キャリアや自己実現は矛盾することではないはずですが、「個」と「組織」の両立は多くの企業が悩んでいる課題だと思います。会社という組織の中ではこのような視点からカウンセリングルームとは異なる限界を感じることがあります。
渡辺三枝子先生は『オーガニゼーショナル・カウンセリング序説』で、オーガニゼーショナル・カウンセリングという考え方を紹介されています。オーガニゼーショナル・カウンセリングとは、『「組織内に生きる個人」と「個人の生きる環境としての組織」の相互依存関係に焦点を当て、個人と組織の双方の活性化をめざしたカウンセリング』と定義されています。組織が抱える課題に対して、全人的な「ヒューマン・サービス」として取り組むにはこの考え方がぴったりだと考え、昨年10月の日本産業カウンセリング学会で「オーガニゼーショナル・ヒューマン・サービス」という形で提案させていただきました。
現実の組織におけるカウンセリングでは、従業員の組織内での活動のみが対象であり、組織外の対人関係や私生活おけるメンタリティにまで広がりがありません。また人材育成の視点は、CSR(Corporate Social Responsibility)戦略や、リーダーやマネージャの育成など経営的・組織運営管理の向上のためという側面が強いように思います。
オーガニゼーショナル・カウンセリングの視点では、家族の問題など組織外の関係性も検討すべき課題として、人材育成以外の個々人の職場におけるヒューマン・サービスに直接関与し、職場の機能化・活性化に関わるさまざまな懸案に関して実効性を伴ったサポートを行うことが求められます。私は、組織内においては人材育成と適応支援が重要だ考えていますが、人材育成に比べて、適応支援(ヒューマン・サービス)の考え方はまだまだ不十分であり、企業が継続的に発展しつつ、そこで働く個々人が十全な働き方ができるためにはオーガニゼーショナル・カウンセリングの考え方をベースにした具体的な企業・組織内の変革、支援を目指すヒューマン・サービスの考え方が有用だと思っています。
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