「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を耳にすることが多くなった。2007年に政府が「ワーク・ライフ・バランス憲章」を策定したのがきっかけである。しかし「ワーク・ライフ・バランス」には、いくつかの誤解があるようだ。
一つは、ワーク・ライフ・バランス(以下WLBと記述)とは仕事と生活が天秤のように「釣り合っている=バランス」状態を示すものであり、どちらかに比重がかかるのはおかしい、という考え方。仕事はそこそこにして生活を楽しむことがWLBであり、仕事に熱中することを否定するものであるという誤解である。二つ目の誤解は、WLBとは育児や介護などの家庭責任を持っている、主として「女性」のための支援策であって、それ以外の人にとってはあまり関係ない、という誤解である。
いずれもWLBの一面しかとらえていない。そもそも「ライフ」は家族生活以外に学習、趣味、余暇、休養など、様々なライフニーズを包含する。仕事とそれ以外のあらゆる生活のステージとのバランスが重要なのである。そして、その「バランス」は一つの均衡点があるのではなく、人によって多様、同じ人でもライフスーテージに応じて多様、という点が重要である。これが従来の労働時間短縮の取組とは異なる点であり、労働時間短縮が必要な場合もあれば、労働時間は同じでも柔軟な働き方(在宅勤務やフレックスタイム制など)が必要な場合もある。労働時間を長くしたいというニーズもある。このような働く人の多様なニーズを実現できる社会が「ワーク・ライフ・バランス社会」といえる。
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