キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】

2008年12月10日配信
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ワーク・ライフ・バランス
   第1回 「なぜ今ワーク・ライフ・バランスなのか」
【2】
法政大学 キャリアデザイン学部 教授  武石 恵美子
 ころで、「ワーク・ライフ・バランス」=仕事と生活の調和はいつの時代も個人にとって重要であったはずだが、なぜ今「ワーク・ライフ・バランス」なのか。
 何よりも現状の「働き方」から生ずる問題が大きい。現在のわが国の労働市場をながめると、働く人にとって「働き方」の選択肢は極めて限定的であり、この働き方の制約が、社会の中で様々なひずみをもたらしている。先進国の中でも低い女性の労働力率、とりわけ子どものいる女性の低い労働力率。それと相関関係にある低い出生率。いわゆる正社員以外の人たちの低い労働条件(特に賃金)。30代、40代男性の長時間労働。いわゆる正社員以外の人たちの低い労働条件や若者のフリーター問題。社会的な課題の多くに、「働き方」が大きく関わっていることが、ワーク・ライフ・バランスへの注目が高まっている背景にある。

 もそも、百人の労働者には百通りの働き方のニーズがあるはずだ。しかし、人事のマネジメントで百通りのニーズに対応するのは不可能である。現実には、そのニーズを類型化しながら、働き方のバリエーションが提供され、その範囲の中から労働者が働き方を選択することになる。

 来、働く側のニーズの多様性への対応がさほど重視されてこなかったのは、ニーズは百人百様であっても、そのバリエーションはそれほど大きくなく、「平均的像」にある程度収斂していたからである。安定的な雇用が保障されること、年齢とともに賃金が上昇して生活の安定を図ることができること、個人間の格差よりも平均的に一定の生活水準が保障されること、そうした働き方を多くの労働者が望んでいた。男性がワーク、女性がライフ、という形で責任を分け合いながら、カップル単位で「バランス」をとっていたともいえる。もちろんそれ以外の働き方へのニーズも存在したが、そうしたニーズに対応することは効率性を削ぐこととなり、平均から外れた労働者のニーズを軽視しても、企業経営は成り立った。同質性の高い労働者を同質的にマネジメントすることのメリットが大きかった。

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