| 実践コミュニティが機会をつなぐ
熟練への発達にとって仕事の機会=技能を試し磨く機会=が重要であることを前回にふれた。人的ネットワークは、仕事の経験を共有したときに、もっとも信頼できるソース(情報源)となる。それは勉強会などの一時的な活動で生まれたものでも可能だが、持続的な相互の関わりや実践の共有を通じて自分の関心を示し、能力をプレゼンテーションすることでいっそう確実なものとなる(信頼に足りない行為をしてしまった場合は逆効果になることもありうる)。非熟練者の場合、直接的な仕事の貢献でなくても、小さな仕事の積み重ねが熟練へのキャリア発達の準備となる。たとえば、キャリア・コンサルタントの養成機関から依頼された小さな仕事や委員会の仕事を引き受けることだ。スーパーバイズの訓練のモデルになる、事例の調査でベテラン専門家の補助としてインタビューに付き添う。インタビューのテープ起こしを手伝う、などである。これらは正統的周辺参加としての態様をなすものである。
主たる所属組織=生業の仕事(先の例では人事)、キャリア・コンサルンタント等の教育機関や資格付与団体との関わり、キャリア支援に関わる委員会活動、地元の心理相談ボランティア活動への参加などは、キャリア支援の実践コミュニティの母体として発展する可能性がある。また、これらの場での実践に、一人の人が重複して参加することも可能である。さまざまな実践コミュニティへの重複的な参加(必ずしも同時でなくてもよい)がキャリア支援者としての成長のフィールドとなり、そこでの実践が知識や技能の修得・再構築の場となり、協働経験のある人々とのネットワークが新たな仕事の機会を提供する土台となる。複数の団体に参加している熟練した人々のネットワークを通じて、これまで交流のなかった団体のなかに、新たな知識が導入されることもある。所属組織・団体(あるいは実践コミュニティ)は、熟達した人材が当団体に深く関与することによって、組織のさらなる発展へとつながる。
このような視座に立脚して自らのキャリアと所属組織や関与する団体との関わりについて総合的に俯瞰してみてほしい。これまで見えなかった何かが見つかるかもしれない。
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