| 「熟練」の課題の克服
「熟練」というのは、一言でいえばキャリア・コンサルタントとして自信を持って専門的サービスを担えるだけの経験と専門性を備えていることをいう。「熟練」への発達課題は、「非熟練」の状態から、いかに一皮向けて、「熟練」状態に移行できるかにある。キャリア・コンサルタントの「熟練」の内容については、中央職業能力開発協会の専門委員会による調査結果から導出された「熟練キャリア・コンサルタントの要件」が参考になる(この調査結果では、非熟練を脱した状態から非常に高度な技能を有した経験豊富な指導者レベルの中間にある状態が想定されている)。
インタビュー調査の結果、熟練キャリア・コンサルタントの特長として、【プロフェッショナルとしての意識】(〔1〕 自身のキャリア・アイデンティティの自覚、〔2〕 やるべきこととできることの役割認識、〔3〕 高い倫理観、〔4〕 困難にも諦めない自己動機づけ)、【クライアントとの関わり方と態度・技術】(〔1〕 クライアント中心のスタンス、〔2〕 積極的傾聴と建設的フィードバックなどの基本スキルの応用、〔3〕 キャリア・コンサルティングに関する準拠理論の理解、得意領域の構築、〔4〕 常に自覚しながら実践し、能力向上のために絶えざる学習を行う)、【組織化と連携】(協力体制の構築と連携)が自律的にできること、が導出された。その詳細については「熟練キャリア・コンサルタントに係る調査研究」報告書(平成17年3月)」、および過去のキャリア・ナウ(2005年6月号 小野紘昭氏執筆)をご参照いただきたい。
さて「熟練」の課題とは、まだ経験が浅く、仕事の自己効力感をもてず、高度な専門サービスを提供できない「非熟練」の状態から、専門知識の応用が効き、豊富な経験に基づいた専門サービスを自信をもって提供できる「熟練」状態になるためのキャリア発達上の課題を指す(図参照)。見習い状態から一人前になるためには、一皮向ける経験(成長契機)が必要となる。また慣れや自信過剰などのベテランの落とし穴に陥らないことも肝要だ。そのためには、自身の能力向上のための継続的な学習が必要なのはいうまではないが、仕事の機会に恵まれること、適切な指導者との出会い、参加するコミュニティの質が鍵を握っている。
図:非熟練キャリア・コンサルタントから熟練キャリア・コンサルタントへの発達プロセス

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