経営理論にみる組織内プロの競争力
前回、組織内プロフェッショナルが競争力を生み出す理由として、外部にはない「ヨコの専門性」を担えることがあげられると述べたが、先日新聞でノーベル賞を受賞した田中さんが、企業の研究者は異なる専攻の人が多く集まり、そこから独創性が生まれると語っていた。さらに、タテだけでは駄目で、ヨコが大切であると主張されていた。これはまさにヨコの専門性につながる話であると嬉しく思った。 さて、これまで企業特有の知識(技術)があるかどうかという議論がよく聞かれたが、知識という切り口だけでは不十分であろう。競争力の源泉となるものを明確に定義することは難しいが、ヨコの専門性がそれに該当し、外部で獲得できない能力、実行力、コミュニケーションによる職務遂行力、知識・技術・ノウハウなどが含まれると考える。そうした専門性は職務遂行プロセスで発揮されるため、様々な職務遂行を通した獲得のためには内部育成が不可欠となる。
これまで経営学ではどのような人材や組織が競争力となるか様々に論じられてきたが、組織内プロフェッショナルの競争力を説明する、新しい経営理論をいくつか紹介したい。それらは、J.B.バーニー「資源ベース戦略論(1991)」、D.ウルリッチらの「戦略的人材経営論(1998)」、そしてT.ダベンポートらの「ナレッジ経営論(2000)」である。
組織内プロの能力を見出す資源ベース戦略論
M.E.ポーターは競争戦略論で企業の外部環境要因に着目し、利益率が高く優位な位置を得ることが競争力の獲得につながるとしたが、J.B.バーニーの資源ベース戦略論では、その企業が保有する独自の資源や能力が持続的競争優位の源泉であるとしている。経営資源が経済価値、希少性、模倣困難、非代替性という属性を持つ場合、その経営資源は企業の持続的競争力の源泉となる。ある企業が存続する以上、そこでの仕事がすべて外部で置き換えられることはなく、そこには非代替で模倣困難な能力が必ず存在する。企業に固有な能力は当該組織で内部育成されるため、そうした固有能力を有する組織内プロフェッショナルに大きな競争力があることが示されたと言えよう。
|