プロフェッショナルの変化
非正規雇用の増加、製造業請負事業の適正化、ワーク・ライフ・バランスの実現、専門職大学院の設立、社会人基礎力など雇用や教育に関わる出来事は、経営のみならず広く社会的な関心を集めている。人の働きは企業内で発揮されるが、人が活動する範囲は企業内に留まらず、またその意欲や関心は絶えず変化している。人を経営から扱う人材マネジメントは時代を反映し、社会とは切り離せない。
「プロフェッショナル」とは、そのような人材を捉える概念の一つとして、1990年代以降、ビジネスの分野でも注目されるようになった。ここで言うプロフェッショナルとは、医師・弁護士など産業革命以前から確立された専門職業に従事する人というより、企業などの組織で、高い専門性や自律性をもって働くマネージャーやスタッフを意味している。
彼らは、企業内プロフェッショナル、組織内プロフェッショナル、ホワイトカラー・プロフェッショナル、ビジネス・プロフェッショナル、またはプロフェッショナル人材など様々に呼ばれる。しかし、企業をはじめとする組織に雇用される人材をプロフェッショナルと捉える点は共通であり、ここでは組織内プロフェッショナルとする。
社会学によるプロフェッションの要件としては、公的資格や免許で証明される体系的かつ高度な知識や技術、倫理的規範、外部専門家組織、独占的権限などがあげられる。この要件を厳密に当てはめると、公的資格だけをとっても企業の業務にはほとんど該当せず、プロフェッショナルは日本のビジネス社会には存在しないとの結論になってしまう。
しかし、伝統的なプロフェッショナルとして、独立自営の職業とされてきた医師・弁護士も、今日では病院や法律事務所などの組織に雇用される人が増えている。勤務医がプロフェッショナルであるなら、独立自営はプロフェッショナルの要件とは言えなくなる。またプロフェッションの要件とされる倫理的規範は、ビジネスパースンにとってももちろん必要なのである。
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