| 経営行動科学学会の年次大会に出席した。この学会は経営学から社会学、心理学の分野まで幅広い分野を対象としていること、また、研究者と実務者の交流の場として位置付けられていることが特徴である。年次大会は毎年11月に開催され、今年は11月10日、11日に立教大学において開催された。
年次大会の内容は研究発表が主になるが、他にも、シンポジウムや事例発表など、様々なセッションで構成されている。これらは並行して行われるため、すべてに出席することはできず、自分の興味、関心、研究分野に応じて、いくつかを選択して出席することになる。今回私が出席したセッションの中で、最も興味深かったのが、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」をテーマにしたシンポジウムであった。
WLBとは文字通り、ワーク(仕事)とライフ(生活、人生)のバランスを適正に保つことである。近年、WLBについては関心が高まり、その重要性について語られることも多いが、新たな発見はメンタルヘルスケアとの密接な関連性であった。私の不明によるところが大とは思うが、これまで目にしたり耳にしたりした中では、メンタルヘルスケアとWLBは、個々に語られてきたように思う。メンタルヘルスを健全に保つための一つの鍵がWLBにあることに気づくことができたことは今回大きな収穫となった。
考えてみれば、メンタルヘルスケアとWLBに密接な関連性があることは自明のことかもしれない。つまり、ワーク(仕事)はライフ(生活、人生)の中にあり、両者のバランスが崩れ、どちらか一方に偏りが生じれば、メンタルヘルス不全の要因となることは言うまでもないからだ。これまでメンタルヘルスケアについては、メンタルとの名が示すように、メンタルのカウンセリング分野で扱うものとされてきた感がある。それゆえ、企業などに勤務する人にメンタルヘルス不全が生じた場合、まず仕事の量を減らすことが指示されることが多いように思う。しかし、仕事量を減らしたくとも、減らすことができない事情がそこには存在する。企業などにおいては、仕事の量を減らすことは仕事の成果が低下することに繋がる。つまり、仕事の量を減らせば成果は上がらず、それは、その人の昇進、昇給に影響が出るのである。そうなれば生活の不安が生じ、将来設計にも不安が生じることになる。心身の健康が何よりも重要であることは言うまでもない。しかし、生活や人生に対する不安がある状態で、メンタルヘルスを健全に保つことに注力することは困難である。従って、ワークに対する不安と、ライフに対する不安を解消すること、つまり、バランスをとることがメンタルヘルスを健全に保つための鍵になると考えることができる。
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