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2006年2月10日配信
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仕事の定着は、入社後数年が勝負である
=== 職場で必要な人にどうやってなれるか ===
【1】
東京女学館大学 国際教養学部 教授   西山 昭彦   《プロフィール》
 社を辞める人が後を絶たない。入社3年で高卒の50.2%、短大等卒の42.9%、大卒の36.5%が辞めているが、その傾向は年々高まりつつある。採用には力を入れる会社が定着には力を入れてないのだろうか。かけるコストからみれば、そうともいえる。ここで、会社の方策を批判してもすぐ結果が出るわけではないので、働く人のほうから定着の問題を考えてみる。それも、防衛的ではなく、どうしたら人は職場で力を発揮し、認められ、本人もそこにいることが楽しくなるのかという積極的な面でとらえてみる。

 事能力については、三つに分けて考えることができる。ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキル、テクニカル・スキルである。第一のヒューマン・スキルは、人間関係を円滑にし、人を動かせる力である。社内であれば、多くの関係者の人に、若いながらも説得し同意を得て動いてもらわなければいけない。また、営業マンであれば、お客様と折衝をして心を動かさなければいけない。

 年若い人の対人力が落ちているので、重要性は増している。会社に入社し新しい大人の人間関係の中に入っていくので、葛藤や対立が起きる。その対立のマネジメントを学ぶことである。正しいことを徹底して自己主張したら上司を通らなくて、一歩引いたら通ったということもザラにある。

 前の大学のゼミで、あるテーマについて議論を行おうと思って、ディスカッションをしてくださいと言ったら、全然進まない。恐る恐るものを言っている。
  「何でできないの?」
  「小学校から大学2年まで、教室で何か意見を発表するという機会が一度もなかったから」というふうに言った学生がいた。

 っと慣れてきて、表面的な相手にダメージを与えない意見は言うが、もっと深く切り込んだり、相手の批判をしない。
   「何でもっと突っ込まないの?」
   「人を傷つけたくないから」と言う。

 つけたくないというのは、イコール自分が傷つきたくないということである。小さい頃から怒られたり、白熱した議論をしていない。心を打ち明けて思いっきりぶつかっての議論ができない。

 ういう学生がそのまま会社に入って厳しく目標管理され、上司にどんどん言われるとガックリしてしまう。評価が悪いと落ち込んで立ち直れない、というような弱さがある。
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