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◆ 2004年11月10日配信 ◆ |
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| キャリア形成支援と日本的経営 |
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●能力開発と日本企業の人事制度9月に、日本経団連の仕事でベトナムに講演に行った。経営者や人材育成部門の責任者を対象とした研修会で、ハノイ市とホーチミン市で開催された。両会場とも約150名の出席者があり、その4割が女性であった。こういう種類の研修会が日本で開かれた場合には、女性は1割にも満たないだろう。 講演の後で、「日本的経営は、人材育成にどのように役立ってきたか」という質問が出た。日本的経営の代表的な特徴は、終身雇用(長期継続雇用)制と年功序列型処遇である。 我が国では、一度雇用したら、ある部署で不適合の人でも簡単に解雇したり、レイオフしたりできない。企業側は、何とか活用できる他の部署を見つけなければならない。終身雇用制度の下では、企業は一人ひとりに力をつけさせ、長所を生かす活用方法を見出し、能力を発揮させるよう努力することになる。 報酬に関しては、何の専門能力もない新入社員に給料を払いながら仕事を教え、しかもその給料が毎年春には上がっていくので(ここ数年は必ずしもそうとは限らないが)、従業員の能力も毎年計画的に高めていかなければならない。給料が上がったぶん仕事もレベルの高いことをしてもらう必要があるわけである。 日本的経営は、人材育成の面で多くの特長を持っている。 ●自己申告を支える職能資格制度 職務遂行能力の種類や程度を分類して職能資格基準を設定し、この基準に基づいて人事処遇をする「職能資格制度」は、我が国の企業で広く取り入れられている。職務能力という概念が基本にあり、職場が変わっても能力は変わらないから給料も同じである。仕事と対価を連動させ、業績によって評価されて給料が決まるやり方とは異なった発想である。職能資格制度に支えられて、ジョブ・ローテーション(計画的育成配置)は円滑に実践される。 例えば、腕のいい40歳の営業マンがいたとしよう。彼は、自分のキャリアとしては営業畑で進みたいと考えているが、数字に強い営業マンになりたいので、2年間だけ経理部で仕事をしたいという自己申告を出した。会社も将来の営業の大黒柱に育てたいという意図で、その自己申告を認め彼は経理部に異動する。営業部門のベテランであっても、彼は経理の仕事は初めてなので、一から教えてもらうことになるが、我が国の人事制度の下では彼の給料は下がらないのが普通である。 国内でも外資系企業の多くは、このやり方を採っていない。「経理部に移りたい」という自己申告を出すと、「あなたは、経理の仕事について、どんな知識や経験を持っていますか」と質問される。そして、経理部に欠員が出た時に、能力を評価されて新しい給料が決まって異動することになる。自己申告は、職能資格制度によって支えられているのである。 ●虎の威を借りて、一段上の仕事をする 日本の経営組織では、部や課などの組織を単位として職務分掌規程が定められており、個人ごとの職務明細や責任権限が明確になっているわけではない。このため、責任の所在があいまいで評価がやりにくい、という指摘がある。 しかし、このあいまいさによって実は職場のリーダーが育ち、後継者養成が進んでいる。 自分の責任権限がはっきりしていないから、仕事がやりにくい、という人がいる。その一方で、責任権限が不明確だから、上司の信頼と了解をとりつつ、上司の権限まで使って一段上の仕事をやってしまう人がいる。上手に上司を動かして、自分が思うように仕事をやってしまう人はどの職場にも一人や二人はいる。上級管理者や経営者になっていく人は、こういう仕事のやり方をする人が多い。 国際競争力の観点から、とかく批判をされている日本的経営だが、人材育成の面では先輩たちの努力によって多くの長所を持っている。キャリア形成についても、支援担当者が力を合わせることで「日本発の知恵」を開発することが出来るに違いない。 |
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