キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】

2011年1月10日配信
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=== 企業におけるメンタルヘルスについて ===
   【第二回】メンタルヘルスとキャリアの関連性
【2】
神田東クリニック MPSセンター 臨床心理士 GCDFキャリアカウンセラー 大庭 さよ

<キャリアに関する問題がメンタルヘルスを悪化させる>
 キャリアに関する問題がストレス原因となりメンタルヘルスに影響を及ぼしている事例として、ある企業において、高ストレス職場に対してストレス調査を行った結果を紹介する。なお、当ストレス調査の結果は、大庭・坂井・島(2006)にて既に発表したものである。

 当ストレス調査は、ある企業の依頼からからスタートした。それは、顧客からの問い合わせや苦情に対応する職場(以下A職場とする)でセルフケア研修を実施してほしいとの内容であった。A職場はメンタルヘルスケースの発生率が高い職場であったため、A職場の現状を把握し、効果的なセルフケア研修を行うために、ストレス調査を実施することとなった。

 A職場の社員全員83名(管理職4名を除く)に対して、次の調査項目からなる調査票を実施した。

(1) ストレスインパクト:A職場の1部の社員(15名)に対してセルフケア研修を行い、その研修の中で「職場において何にストレスを感じるか」についてディスカッションをしてもらうとともに、自由記述のアンケート調査を行った。ディスカッション、アンケート調査から集められた項目に社内メンタル事例から上がってきた項目を加え、ストレッサーの項目を作成した。これら34項目に対し、「あなたは仕事をする上で下記の項目に対してストレスを感じますか」という質問に対して4件法で答える。
(2) 職業性ストレス簡易調査票に含まれる仕事特性:仕事量過重3項目、仕事のコントロール3項目に対して4件法で答える。
(3) 職業性ストレス簡易調査票に含まれるサポート:上司3項目、同僚3項目に対して、4件法で答える。
(4) 組織コミットメント:会社への愛着を測定する4項目に対して4件法で答える。
(5) 組織サポート:組織から自分がどのくらい大事にされていると感じているかについて8項目に対して4件法で答える。
(6) ストレス症状:GHQ(General Health Questionnaire)12項目に対して4件法で答える(GHQ法)。

 ストレスインパクトに関して、因子分析をしたところ6因子が抽出された。(1)管理方針に対する不満 (2)顧客対応ストレス (3)キャリアへの不満 (4)上司とのコミュニケーション不全 (5)仕事量過負荷・不公平 (6)休憩環境の不充実

 これらのストレスインパクトがどのようにストレス症状に影響を及ぼしているのか、分析をしてみると、「常連のクレーマーからの電話を受ける」といった顧客対応そのものからこうむるストレスは、直接的にストレス症状を高め、メンタルヘルスを悪化させていることがわかった。さらに「キャリアアップしていると感じられない」「今後のキャリアの方向性が定まらない」「現在の業務に適性がない」といったキャリアへの不満が高くなると組織から大事にされていないという感覚が高まり、その結果として用いたストレス症状が高まることがわかった。

そこで、当初の目的であったセルフケア研修は、ストレス症状に直接的に影響している顧客対応ストレスに対処する方法を身につけることを目的として実施された。キャリアへの不満に対しては、社内カウンセリングにてキャリア・カウンセリングを行うだけでなく、ジョブローテーションなどのA職場からのキャリアパスの整備がメンタルヘルスの改善に結びつくことを管理職や経営層に伝えることにより、メンタルヘルス改善を目指すこととなった。

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