キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】

2009年10月10日配信
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「能力の評価・開発とキャリア」(2)
【2】
専修大学 経営学部 教授  廣石 忠司
2.本人の志望と本当の適性
 そもそもキャリアを考える際に、本人の志望するキャリアが妥当なのかどうか、検証する必要がある。
 一例をあげよう。筆者のゼミの卒業生(A君としよう)であるが、A君はコンピューターに大変興味を抱いていて、コンピューターソフト制作の企業に入社を希望していた。筆者も総合して十分有能な人材と思っていたら、その業界の企業への就職にはことごとく失敗してしまった。一企業との「相性」なら理解できるが、同業他社でも同じ状況だというのは理解に苦しんだ。そこで筆者と親しい人事課長がいるソフトハウスを受験させ、採用担当者からのコメントを聞くこととした。その結果の報告が人事課長からあり「残念ながらA君は採用できません。適性検査で『論理思考能力』の点が低いのです。これではこの業界はどこでも採用しないでしょう」とのこと。「どこか長所はありませんでしたか」と筆者。「『リーダーシップ』で高い点数が出ています。営業など他業界を勧めてはどうでしょうか。」
 そこで他社受験をA君に勧めると、しぶしぶ全く違う業界の某社を受験した。すると某社の人事課長から「あんな優秀な学生がなぜ今まで内定をとれなかったのですか?」と逆に質問され、即日採用内定が出されたことがある。
 このように本人の希望するキャリアと、他者からみた本人の適性が異なることは少なくないであろう。これが単に能力不足ということなら、専門知識をさらに身につけさせるため、テキストの推薦、専門学校や通信教育を勧めることなどが可能である。問題は本人が一途に思いこんで描いている「キャリア」が第三者の目からは適当でないと思われた場合の対処である。キャリアマネジメント力がここで試される。適当と思われる他部門に異動させるというのは一番簡単な手法である。「君の隠れた適性を見いだしたい」という理由である。
 これで本人が納得すればよいが、不本意な異動であるなら、退職につながってしまうかもしれない。本人の納得を得るというのは難しい。今までの本人のキャリアプランを否定することにつながるからである。誰しも自己否定はつらく感じる。上司に対する恨みも出てくるかもしれない。
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