キャリア形成推進マガジン
キャリア・コンサルティングの現場からの報告

2008年8月10日配信
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私の若年者就労支援のあり方(5)
【2】
 こうべ若者サポートステーション / こうべ若者自立塾 / 若者しごと倶楽部サテライト阪神
 
キャリア・コンサルタント 瀬谷 俊宏
<一連の作業を通して>
 来談当初、相談者の中には自他を否定的にとらえて、不安や焦り、怒りといった感情が優位に働き、感情をうまく表出できない状態に陥っている人が見られます。このような状態のままでは、彼らは自分の置かれた状況を冷静に見つめ、課題の把握や整理ができなくなってしまいます。しかし、この一連のコンサルティングを通して、自由に心のありようを語れる場を保障することによって、彼らは安心して感情を表出できるようになっていきます。
 コンサルティング回数を重ねるごとに、相談者は過去の自分に照らし合わせて同じ経験を繰り返すのではないかという「不安」を抱えながらも「やってみよう」とか「やってみたい」と過去の自分にけじめをつけようと真摯に自分自身と向き合うようになります。相談者の中には、終結を目前にしたフォローアップの中で、コンサルティングの初期に「今までの自分には自信がなかったから、これからの自分もうまくいくはずがない」というように過去を基点とした不安から「これから何が待っているのだろうか」というように将来を基点とした不安すなわち、「期待と不安」へと気持ちが変化したと語る方がいます。
 そういった段階を経て、次第に自他肯定的に捉えられるようになり、就職活動に向けて行動が促進されていきます。
 一連の作業を通して次のような相談者がいます。

・相談者X
応募書類の添削・指導を通して;
 ある相談者はこの一連の作業を終えて、「何かわからないけど、楽しい」と振り返ります。さらに「(自分の)職歴が恥ずかしいと思っていたし、それを先生(私)に見せることも恥ずかしいと思っていた。何かこの前のコンサルティングで先生に話を聴いてもらってから家に帰って早く(応募書類)作りたいなあと思いました。でも、今日のコンサルティングが近づいてきて、履歴書を昨日作らないといけないと思ったけど、どう書くねんと先生に腹が立った。・・・けど、今日添削を受けてみて、話し合ってみて、時間が早く過ぎた感じがしました」と丁寧な口調で語る一方で、「それに不安もあるけど、不安は不安なんですけど、これからのことを思ったら、楽しみだなあって思う不安なんだなあ・・・ていう自分に気がつきました」と語ります。

・相談者Y
一歩踏み出す心の整理作業を通して;
 コンサルティングの初期の段階で、「働きたいけどこんな自分を社会が受け入れてくれるのだろうか・・・」と過度に不安を表出する相談者に、白紙を渡し「不安な気持ち」を書き込んでもらいます。そして、相談者と私がその紙を見ながら「ここに今まであなたを苦しめてきたものが、書かれています。最後のお別れをしてください。○○さんのよいタイミングでシュレッダーしてください」と伝えてからシュレッダーしてもらい、その後ゆっくりと私は彼にシュレッダーした今の気持ちを尋ねます。すると彼は「嫌なものだと思っていたけど、今思うと全部が全部悪くないっていうか・・・・愛しいというか・・・・」と苦笑します。

 相談者X、Yのように、彼らは現在に生きる存在でありながら、心は過去の時間軸に捉われた存在なのです。その時間軸を未来に向けていくことが、その後のコンサルティング・プロセスを促進する分岐点になります。
 このような作業をせずに進めたコンサルティングにおいて、相談者はコンサルティング・プロセスの中で一時的に将来に希望を見出すことができたり、行動できたりするものの、「根本的なニーズ」が未整理な状態にあり、それに直面する段階に差し掛かると、過去の時間軸への揺り戻しを体験することになります。そうなると、コンサルティング・プロセスは停滞と後退を繰り返してしまい、コンサルティングは遅々として先へ進めない状況に陥ってしまいます。

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