カラセックは、四つの就業状況で働く社員の抑うつ度を抑うつ検査によって測定している。その結果によれば、抑うつ度が最も高いのは高緊張就業状況の社員、最も低いのは低緊張就業状況の社員であった。また、高緊張就業状況の社員であっても、上司や同僚からの情緒的サポートを受けていると抑うつ得点が低下することも分かってきた。
カラセックのこの研究結果を私なりに結論付けると、無理難題を社員に要求しても、それなりの裁量権を与えて十分に励ましさえすれば、社員は健康にしかも前向きに仕事に従事できる、と言うことである。
カラセックの研究結果と私なりの結論を基に、1988年、私は日本で初めてのサテライトオフィスのパイロットプロジェクトを民間企業のバックアップを受けて立ち上げた。東武東上線の志木駅の一つ先の柳瀬川駅に近接したビルに約100坪のフロアーを用意してサテライトオフィスを開設し、五つのブースを作って近隣に住む五社の社員(各社3名ずつ)に通勤してもらった。サテライトオフィスに通勤する社員の選抜について、私が提示した選抜条件は、
1)サテライトオフィスまでの通勤時間が30分未満
2)本社への出勤は原則として一ヶ月に一度
3)一ヶ月単位のフレックス勤務
4)非管理職者
の四点であり、職種、年齢、性別などについては各社の人事担当者に任せた。サテライトオフィスの各ブースには最新の事務機器と本社に直結するTV電話が設置され、共同利用スペースには日刊紙五社の新聞、各種ビジネス雑誌、ソファー、無料のドリンクサーバーなどが置かれた。
このプロジェクトを立ち上げた私の意図は、直上司のコントロールを離れ、十分に裁量権が与えられた就業状況でどの程度業務成果をあげられるかにあった。カラセックの四つの分類では積極的取り組み姿勢に該当する就業状況はサテライトオフィスであれば作ることができると考えたのである。
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