キャリア ナウ  

2006年12月10日配信
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職場のストレスは人災である
【2】
早稲田大学 文学部 教授   小杉 正太郎
 場には二種類のストレッサー(ストレス因)が社員を待ち受けている。一つは、休日出勤や残業などの原因となる膨大な仕事量が作り出すストレッサー、もう一つは、指示命令に従うだけで主体的に仕事に取り組めない受身的な就業状況が作り出すストレッサーである。前者は業務の量的負荷に由来するので量的ストレッサー、後者は業務内容に関係するので質的ストレッサーと呼ばれている。これらのストレッサーに対する適切な対策を怠ると、苛々感、緊張感、憂うつ感などの不快な気分が募り、やがては退職願望に行き着いてしまう。
 剰な業務量や時間に追われる多忙な毎日から生まれる量的ストレッサーは、管理職者や高度に専門化した業務にかかわる社員が自覚するストレッサーである。業務量を分散すれば解決できるが、"余人を以て代え難い"業務を担当する立場にあれば、管理職者たるものある程度は我慢し必要悪と諦めるしかない。
 たや主体的に仕事に取り組めない受身の就業状況から生まれる質的ストレッサーは、新入社員や若年社員あるいは中途採用者を悩ますストレッサーである。"仕事を進める上での役割がはっきりしない"、"担当業務のゴールが見えない"、"一々上司の決裁を受けなければ仕事が先へ進まない"などはこの種のストレッサーの典型である。
 種類のストレッサーのうち社員の元気を失わせ生産性を低下させるのは、質的ストレッサーである。入社3年で新入社員の20%が離・転職するそうだが、そのほとんどがこの質的ストレッサーの餌食となっているのである。ご自分の会社の各部署を観察してみるとよい。私語が飛び交い一見規律のないような状況でありながら、明るく楽しく働く部署と、静粛に机に向かっているが暗い雰囲気の部署とがあるはずだ。前者の管理職者は出来る限り部下に仕事を任せ、気軽に部下の相談に応じる上質の上司であろうし、後者の管理職者は経験則が大好きで『自分で工夫しろ』『君の権限はそこまでだ』を連発する悪質な上司のはずだ。
 まり、質的ストレッサーは上司の管理手法によってかなりの程度改善できるのであり、この点で質的ストレッサーに若手の部下が痛めつけられるのは、上司による人災の結果と言うことができるのである。
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