キャリア ナウ  

2006年11月10日配信
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個人の自律的キャリア開発と日本型組織モード 【その3】
【3】
神戸大学大学院 経営学研究科 教授   平野 光俊
3.日本型人事管理の進化型

 インセンティブ制度を職務主義に変更した企業では、人事情報の費用問題を解決する新しい施策が必要となります。ひとつがマネジメント人材の人事部個別管理、もうひとつがエキスパート人材のキャリア自律支援です。具体的な施策と人事情報の費用問題の関係は以下のようなものです。
(1)マネジメント人材の個別管理
 人事情報の粘着性問題への対処として、処理すべき人事情報の量を絞り込むことが必要となる。たとえば、人材開発委員会などの機関を設置してポテンシャルの高い次世代リーダー候補を絞り、人事部主導で個別にキャリア開発を行う「サクセッション・プラン」が挙げられます。
(2)キャリア自律支援
 人事情報の非対称性問題への対処としてライン管理職の機会主義的な行動を封じ込める必要がある。たとえば、「社内FA(フリーエージェント)制度」と「社内公募制度」が挙げられます。これらの施策によって、人事部はライン管理職を介すことなくダイレクトに人事情報を収集できます。同時に、このような自己人事の仕組みを機能させるには、「キャリア・カウンセリング」などを用いて社員の自律的キャリア意識を高める必要があります。

 以上の議論から日本型人事管理の進化型の考察において、次のような原理を導き出せます。
 【人事情報の非対称性と粘着性の原理】
 
人事部は社内の人材に関して精確な情報を全て手に入れることはできない。人事管理は、このことから生じる問題を解決するように進化的に修正される。

 上記の原理を基礎にしてこれまでの議論を総括して日本型人事管理の進化型を示しておきます。
(1) かつての強みであった人材の内部育成を目的とした全体最適配置を放棄することなく継続する。
(2) インセンティブ制度は、能力主義と職務主義と折衷させた役割主義に転換する。
(3) 役割主義インセンティブ制度の変更に付随して生じる人事情報の費用問題を解決するよう、人事部が個別管理する「マネジメント人材」を絞り込む一方、異動の企画・調整をもっぱらラインに委ねる「エキスパート人材」の二極化した人材類型管理を行う(人事情報の粘着性問題への対応)。
(4) マネジメント人材とエキスパート人材に二極化した人材育成は、前者は幅広いキャリア・ローテーションを通じたトレーニングによって企業特殊総合技能を、後者は幅狭いキャリア・ローテーションを通じて機能的なエキスパート技能の発展を図る。
(5) エキスパート人材が管轄を超えるキャリア・パスを希望するのなら、自ら異動を企画・実践するような自己人事が必要となるのでキャリア自律支援施策を導入する(人事情報の非対称性問題への対応)。

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