教育の個人責任化・キャリア支援重視は何をもたらしたか
1990年代日本企業の教育投資が大幅に削減されたことは様々なデータが物語っている。従業員一人当たりの教育費は年々減り続けた。しかも教育費の重点投資は、経営者や部長ないしは次期幹部候補生に向けられた。したがって管理職や一般社員教育は大きく縮小し、中には「社員教育をしている余裕はない」「教育は自己責任でやれ」と明言した人事部長やトップマネジメントも少なくない。
その結果として階層別教育が否定され、個人の意欲と能力に基づく選抜・選択教育、そして自己啓発重視とキャリア支援教育へと大きく転換されたことは周知のことである。
極端な会社依存のキャリア形成、いやそれは会社都合のみによるローテーション・人事異動の結果でもあったが、おんぶに抱っこ的な能力開発からの脱皮を目指すものであった。しかし「教育の自己責任化」そして「キャリア支援重視」の人材教育・能力開発戦略は、「教育を受けられる幹部候補生」と「放っておかれる社員」への分割を進め、「上司・先輩は後輩を指導すること」あるいは「切磋琢磨」とか「共に育つ=共育」といった学習組織の基本マインドを崩壊させていったのである。同時に極端な場合は、「自分に有利になるキャリア開発のことしか考えない」、「キャリア開発に関連すると思われる仕事にしか、力をいれない」志向を強めてきているのである。地道な訓練、地味な仕事から得られるコンピテンシー、日々の積み重ねから得られるスキルの熟成と喜び等が軽視され、回避されるに至っている。 |