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2005年1月10日配信
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個人面接だけにとどまらないキャリア・カウンセリング
カウンセリング心理学者、東京成徳大学 教授   國分 康孝   《プロフィール》
 日本のカウンセリング界は長い間、ロジャーズ派が主流をなしていた。ロジャーズはカウンセリングと心理療法を識別しなかったので、今でもカウンセリングといえば、面接室の中での面接を連想する人が少なくない。しかし、私の認識では、カウンセリングは今や面接法だけにとどまってはいられない時代になっている
 ところが最近になって「カウンセリングは臨床心理学専攻者でなければ実施できないものである」かの如き風潮を流布する民間団体がロジャーズ派に成り代わって、日本のカウンセリング界を支配しようとしているかに見える。
 キャリア・カウンセリング関係者は、この風潮に対峙する知的勇気を持つことによって、キャリア・カウンセリングのアイデンティティを確立できると思われる。これが本稿の主張である。
 たしかに(1)人生コースの選択に迷い、あるいは(2)選んだ人生コースに適応できずに困っている人がクライエントであれば、個別面接法で対応するであろう。すなわち、葛藤とか心理的離乳の未熟とか不安とかをキャリア・カウンセラーも扱うことがあるので、心理カウンセリングやメンタルヘルス・カウンセリングになることもある。
 しかし、これがキャリア・カウンセリングの本流ではない時代になりつつあると言いたい。キャリア・カウンセリングには「身上相談(問題解決志向のコンサルテーションの意)」のほかに2つの目標がある。ひとつは予防、もうひとつは開発である
 キャリア形成の途上での挫折や失敗が防げるものなら防いだほうがよいという発想の予防的キャリア・カウンセリング。
 キャリア体験そのものを個人としても職業人としても成長するのに有効なものになるようにサービスする(例:ソーシャルスキル、コミュニケーションスキルの研修)開発的キャリア・カウンセリング。
 では問題解決・予防・開発という3つの目標を達成する方法として何があるか。私は主なものが4つあると考える。
 第1は個別面接。これは上記3つの目標を達成するのに役立つ方法である。ただし、この方法だけがキャリア・カウンセリングの主流にならないほうがよい。効率がわるいからである。一部分の人にしかサービスできないからである。すなわちaccountabilityの問題があるからである。
 第2はガイダンス方式。これも上記3つの目標を達成するのに役立つ方法である。情報や助言をグループメンバー全員を対象に提供する方法である。インストラクションが主たる技法になるので、キャリア・カウンセラーは人前でスピーチする能力が必要である。傾聴能力だけでは不十分である。
 第3はワークショップ方式。これも上記3つの目標を達成するのに役立つ方法である。グループ内での体験学習である。技法としてはエクササイズ(課題)の提示、介入、シェアリングが主となる。これについては構成的グループエンカウンター(SGE)が示唆するものが大きい。キャリア形成にまつわる気づき、模倣、動機づけの機会を意図的に(レディネスを考慮しての意)用意できるのがワークショップの特長である。
 第4は組織への具申である。従業員のキャリア形成の権利が奪われているときには「身を挺して」組織に提言するsense of justiceがキャリア・カウンセラーには必要である。そのためには組織心理学や産業関連の法知識を支えとして学ばねばならない。特定個人の心の中しか扱わないのは心理主義といって、すべてのカウンセラーが陥りがちな悪弊である。
 結語。企業のキャリア・カウンセラーは心理学者とか心理療法家というイメージではなく、どちらかといえばコンサルタント(パーソナリティ変容よりも行動選択の専門家の意)ではないかという印象を私は持っている。学校では「人生計画担当の教育者」と定義してよいと思っている。
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