目の前の資源をきちんと見る・・・その場合、最大の注目点は人的資源である。机上のM&A作戦に酔って、力のある企業を買収してみたら数ヶ月で相手側の有能な社員の大多数が流出してしまい、後にはもぬけの殻(エンプティ・コート、と比喩的に英語で言う)が残った企業は多い。中間管理職肥大化に反対して管理職のスリム化を図ったら、有能な管理職は他社へスカウトされ、少数の無能な管理職が残って、組織はスリム化したが、利益もスリム化した、って経営もある。現場の仕事はすべてパート、アルバイトに変え、正社員は店長・作業長だけにしてみたら、労務費は下がったが、監督職の労働は苛酷になり、現場のマネジメントを考える暇もなくなり、顧客対応は荒れ果てた、って経営もある。人を大切に、という思い込みで高齢者に優しい会社づくりをしたら、世代ギャップがひどくなって若い社員の流動化が激しくなったという経営もある。有能な即戦力というふれこみの経営職をスカウト会社に多額の紹介料を払って入れてみたら、わがまま好き放題にして事業を食い物にしたあげく、さっさと転職してしまったという例もある。
経営戦略も人材育成も浮ついた気持ちではできない。即効薬を求めても、それはない。フィットネス機器の広告のごとく毎日数分、経営戦略を考え、訓練をしたら、数ヶ月で効果が出るってことはまずない。これ一冊で戦略の達人になれるという本は読まないことである。1時間で人材診断ができるというテストはやらないことである。
☆川喜多先生には、次号についてもご執筆をお願いしています。 ☆ |